はじめまして、あまりにも素人的な質問で申し訳ないのですが、よろしければ教えてください。私のおじいさんが戦争で亡くなった人の為に、慰霊碑の他に観音様の像を建てたいといっているのですが、そもそも観音様ってなんの神様なのですか?いろいろ観音様もあるようなのだけれど一般に言う観音様とは、どの観音様のことなのでしょうか?教えてください、お願いします。
観音様というのは「観世音菩薩」の日本的略称で「観自在菩薩」とも言います。「観世音菩薩」あるいは「観自在菩薩」というのは、大乗仏典のなかに登場する菩薩の一人で、「Avalokitesvara-boddhisattva」というサンスクリット語の漢訳です。菩薩(boddhisattva)というのは、語源的には「悟る存在」という意味ですが、ブッダ(悟った人)になるための努力をしている人、つまり求道者(悟る前の釈尊や仏教僧)のことです。それが本来の意味でした。
ブッダの死後数百年経って(おそらく西暦前後100年ごろ)新しい仏典を次々に創作して、伝統的仏教に挑戦した仏教徒たちがいました。彼らの批判の対象となったのは、仏教徒が自分自身の悟りばかりを追及して、他人、とくに大衆の救いに関心を持たなかったことだと言われています。そのため、伝統的仏教を「小乗」つまり「おのれの救いしか追及しない、小さな乗り物」とけなし、自分たちを「大乗」つまり「大衆を救う大きな乗り物」と位置づけ、大衆の救いに関心を持つ新しい求道者の理想像として大乗仏典に登場させたのが、何百何千という数の菩薩たちです。観音様(観世音菩薩あるいは観自在菩薩)というのは、この大乗仏典のなかに登場する、「Avalokitesvara」(アヴァロキテシヴァラ「観自在」)という名前のある一人の理想的求道者のことです。観自在菩薩をはじめとする数多くの菩薩は、創作(既存の仏教を内側から批判した書である大乗仏典という宗教文学)のなかの理想化された登場人物であって実在人物ではありません。
しかし、この反逆する仏教徒たちが自分たちのあたらしい理想像として創出した菩薩たちは、いつのまにか、一般の信者の間では、自分たちを救ってくれる実在の信仰の対象(救い主)として受け取られるようになりました。そして、菩薩の中でも、観音菩薩はとくに、いつのまにか優しい顔をした女性になったり、千本の手を持つようになったりして、だれでも受け入れてくれ、できるだけ多くの人々を救おうとされる、たいへん慈悲深い菩薩として信仰されるようになりました。それが、中国へ渡り、朝鮮半島を通って、日本にやって来たのです。
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